進行図(しんこうず)は、西洋占星術において、出生時のホロスコープをもとに、現在の運勢や将来の傾向を予測するための技法です。進行図では、生まれた瞬間の星の配置(ネイタルチャート)に対し、現在の自分の状態に合った星の動きを追加して読み取ることで、人生の進展や心の変化、環境の変化を示します。進行図は「プログレス」とも呼ばれ、「二次進行法」や「三次進行法」といった具体的な技法があり、特に人生の重要な時期や変化のタイミングを見極めるために使われます。
進行図はトランジット(実際の天体の現在の動き)と組み合わせて使われることが多く、内面の変化や成長の兆しを読み取るのに適しているため、自己理解や長期的な人生設計に活用されます。
進行図の主な技法
進行図には複数の技法があり、占星術の流派や占星術師によって使われる方法が異なりますが、代表的な方法には「二次進行法」「三次進行法」「ソーラーアーク法」があります。
1. 二次進行法(セカンダリープログレッション)
二次進行法は、1日を1年として計算する方法で、最も一般的な進行図の技法です。例えば、出生後30日目の星の配置を30歳の時の進行図として扱い、現在の進行図は、生まれた日からの経過日数と同じ星の配置を使って作成されます。この技法は、内面的な変化や感情面の変化を示すとされ、月の進行(プログレスムーン)が重要な役割を果たします。
2. 三次進行法(ターティアリープログレッション)
三次進行法は、1日を1か月として換算する方法です。二次進行法と比べて短期的な変化に焦点を当てた進行図で、半年から数年単位での心境の変化や外部環境の影響を読み取ることができます。三次進行法は、感情面や日常生活の変化に関連する内容を読み解くために用いられます。
3. ソーラーアーク法
ソーラーアーク法は、太陽の進行角度を基準にしてすべての天体を同じ速度で移動させる方法です。太陽が動く角度と同じだけの距離を他の惑星にも反映させ、ネイタルチャートと組み合わせて現在の状況や変化の兆しを読み取ります。ソーラーアーク法は、人生における重要な出来事や長期的な変化の予兆を見るのに適しており、二次進行法と併用することで、より具体的な変化のタイミングを予測できます。
進行図で読み取る要素
進行図では、ネイタルチャート(出生時のホロスコープ)と比較することで、内面的な変化や成長のサイクル、人生の節目における転機を読み取ります。特に注目されるのは、進行した月(プログレスムーン)の位置や、アセンダント(上昇宮)、ミッドヘブン(MC)との関係です。
1. 進行した月(プログレスムーン)
進行した月は、感情面の変化や内面の成長を示し、進行図で最も重視される天体です。月は約2.5年ごとに星座を移動するため、星座の変化によって感情の移り変わりや精神的なテーマが変わります。例えば、進行した月が「牡羊座」に入ると積極的な行動や新しい挑戦に意識が向かいやすく、「蟹座」に入ると家庭や心の安定が重要なテーマになるといった具合です。
2. 進行した太陽(プログレスサン)
進行した太陽は、人生の目標や自分のアイデンティティの変化を示します。太陽は約30年ごとに星座を移動し、その変化は人生の節目や大きな方向転換と関わることが多いです。太陽が新しい星座に移行するタイミングは、目標が大きく変わったり、新しいステージに進む際に影響を与えるとされます。
3. 進行したアセンダント(上昇宮)
進行したアセンダント(ASC)は、自己表現や他人に与える印象が変わることを示します。アセンダントが変化すると、他人からの評価や人間関係のパターンにも影響を与えます。例えば、進行したアセンダントが「獅子座」に変わると、自己表現が豊かになり、人に影響を与える力が強まるとされます。
4. 進行したミッドヘブン(MC)
進行したミッドヘブン(MC)は、キャリアや社会的な立場に変化が生じることを示します。MCの変化によって、仕事や社会的な役割に対する意識が変わり、新たなキャリアパスが開けることもあります。MCが「天秤座」に入ると、協力や調和が重要視されるようになり、「山羊座」に入ると責任感や目標達成が重視される傾向が強まると考えられます。
5. 進行した天体と出生時の天体のアスペクト
進行した天体が出生時の天体と形成するアスペクト(角度)は、人生の変化や転機を示す重要なポイントです。特に、進行した月や太陽、アセンダントとネイタルチャート上の天体が強いアスペクトを形成すると、その影響が出やすくなります。例えば、進行した太陽が出生時の木星とトライン(120度)のアスペクトを取る場合、成長や成功のチャンスが巡ってきやすい時期であると解釈されます。
進行図の活用方法
1. 自己理解と内面の成長を把握する
進行図は、特に内面的な成長や感情面の変化を把握するのに役立ちます。進行した月の位置や太陽、アセンダントの変化を通じて、自分がどのような価値観や目標を持って成長しているか、またどのような分野に重点を置いているかを知ることができます。進行図によって、今自分が直面している課題や向き合うべきテーマを把握し、自己成長に役立てることができます。
2. 重要な時期や転機の予測
進行図は人生の節目や転機を知る手がかりとして活用されます。進行した太陽や月の位置、アセンダントやMCの変化によって、キャリアや家庭、人間関係などの中で重要な出来事が訪れる可能性のあるタイミングがわかります。たとえば、進行した太陽が星座を移動する時期や、進行した月が重要な天体とアスペクトを形成する時期などに、転機が訪れやすいとされています。
3. 長期的な人生設計の指針として
進行図は、長期的な人生設計を立てる際の指針としても活用できます。例えば、進行した太陽が星座を移るタイミングに大きなキャリアの転換期を迎えることが予測できる場合、その時期に向けて準備を進めておくことが可能です。進行図を通じて、将来的に重要となるテーマや自己成長の方向性が見えてくるため、人生計画の参考になります。
進行図を活用する際の注意点
1. トランジットとの併用
進行図は内面的な成長や自己理解を示すため、実際の出来事や外的環境の変化を示す「トランジット」と併用することが望ましいです。進行図だけでは具体的な出来事を予測するのが難しい場合もあるため、トランジットを組み合わせることで、より総合的に運勢を読み解くことができます。
2. 大きな流れに焦点を当てる
進行図は長期的な変化を示すものであるため、日常的な小さな出来事よりも、大きな流れや人生のテーマに焦点を当てて解釈することが重要です。進行図を活用する際は、数年から十年単位の長期的な視点で自分の成長や方向性を捉えることがポイントです。
3. 自己理解を深めるために利用する
進行図は、運勢を知るだけでなく、自己理解や成長のために活用するのが理想的です。進行図から得られるメッセージをヒントに、自分の感情や行動を振り返り、より良い選択ができるよう活用することが、進行図の意義を最大限に引き出す方法です。
まとめ
進行図は、西洋占星術で現在の自分の内面的な変化や成長の流れを把握するための技法で、特に二次進行法(1日=1年)が一般的に用いられます。進行図では、進行した月や太陽、アセンダントの変化を通じて、人生のテーマや自己成長、内面の変化が示され、長期的な人生設計や自己理解のために役立てることができます。進行図を活用することで、人生の転機やテーマを意識し、より充実した選択を行うための指針とすることができます。