太陰暦(たいいんれき)は、月の満ち欠けを基準とした暦で、1か月の長さを月の満ち欠けに基づいて定める暦法です。1か月は新月から次の新月までの29.5日(平均朔望月)を基に、29日か30日とし、12か月で約354日を1年とするため、太陽年(365.24日)よりも約11日短くなります。
そのため、太陰暦は季節とずれが生じやすく、農耕や季節行事との調整が難しいという特徴があります。日本では古代から使われていましたが、明治時代に太陽暦(グレゴリオ暦)が正式に採用され、現在は一般的には用いられていません。しかし、旧暦として今も影響を残し、伝統的な行事や占いの基準として利用されています。
目次
太陰暦の特徴と仕組み
月の満ち欠けに基づく1か月
太陰暦の1か月は、月の満ち欠けを基に約29.5日で構成され、29日または30日とするのが特徴です。各月が新月から始まり、約29.5日で再び新月を迎えることで1か月としています。
1年が約354日
太陰暦は12か月で約354日となり、太陽年(365.24日)よりも約11日短くなるため、毎年少しずつ季節とずれていくという特徴があります。月日が進むにつれ、約3年で1か月分、季節がずれるため、太陰暦のみでは季節の移り変わりに追いつきません。
太陰太陽暦との違い
季節と太陰暦のずれを解消するために、太陰暦に太陽の要素を取り入れた「太陰太陽暦」が考案され、19年に7回、閏月を挿入することで季節と暦を調整します。旧暦と呼ばれるものは、主にこの太陰太陽暦を指しています。
日本や他国での使用
太陰暦は日本、中国、イスラム圏などで使用されてきましたが、日本では明治6年(1873年)に太陽暦に改暦され、現在は主に旧暦や伝統行事の基準として残っています。イスラム暦は純粋な太陰暦で、閏月を設けずに月日が移動し続けるため、毎年季節が異なります。
太陰暦の利用と文化的な影響
伝統行事や暦の基準
日本の多くの伝統行事や占いの基準は、太陰暦(旧暦)を基にして行われています。たとえば、七夕やお盆、節分、十五夜などの行事は、太陰暦の暦日に基づいています。そのため、現行の太陽暦と比べて日付がずれることが多く、旧暦に合わせて行う地域もあります。
農耕や暦占
農耕においては、月の満ち欠けや旧暦の日取りが農作業の目安として活用されてきました。また、暦占(こよみうらない)や風水、干支占いなどでも太陰暦を用いて時期や運勢を読むことが多く、古来より生活の指標とされてきました。
イスラム暦における使用
イスラム暦(ヒジュラ暦)は、純粋な太陰暦の形式をとり、閏月を設けずに月の満ち欠けのみで1年を定めるため、約11日ずつずれ、季節が循環する特徴を持っています。イスラム教のラマダンなどの行事は、このイスラム暦に基づいて行われます。
太陰暦の歴史
日本での使用と旧暦
日本では、古代より中国から伝わった太陰暦が使用され、江戸時代にいたるまで主に太陰太陽暦が使われていました。明治6年(1873年)に太陽暦が正式に採用され、現在のグレゴリオ暦へと移行しましたが、農村部や一部の地域では旧暦に基づいて伝統行事が行われることも少なくありません。
中国やイスラム圏での発展
太陰暦は、中国やイスラム圏を含む多くの国で長く使われてきました。特に中国では、太陰太陽暦を発展させ、農作業や季節の変化に応じた暦が整備されました。イスラム圏では、イスラム教の教義に基づき、純粋な太陰暦であるヒジュラ暦が使われており、現在も公式な宗教暦として続いています。
まとめ
太陰暦(たいいんれき)は、月の満ち欠けに基づいた暦で、1か月を29~30日とし、1年を約354日とする暦法です。太陽年よりも短く季節とずれるため、調整が必要で、太陰太陽暦(旧暦)として発展しました。日本では明治時代に太陽暦に改暦されましたが、現在も伝統行事や占いの基準として使われています。
太陰暦の特性を理解することで、月のリズムや旧暦行事の意義をより深く知り、現代生活にも役立てることができるでしょう。